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2013年のAV業界を振り返る

2011年を小向美奈子、2012年を成瀬心美の年とするならば、2013年はつぼみの年と言えるだろう。AV30でAV女優1位に選ばれたつぼみは企画単体として怒涛の現場数をこなしていたが、2013年9月からムーディーズ・ワンファクW専属になったのである。CAによる「つぼみのW専属」化は、つぼみ起用を阻止されたSODグループにとって大きな打撃となった。現・WILL(特にムーディーズ)の「企画単体囲い込み戦略」の原点がここにある。

SODでは農業に逃避し損失を拡大させていた高橋がなりがAV復帰し、体制を整えようと画策するが、専属の離脱・発売中止が相次ぎ、混迷を深めていく。プレステージはDMM発売日同時配信に合意し事実上CAに屈服した。

ティーパワーズなどのAVプロダクションを牛耳る関東連合・松嶋クロスと柴田大輔の内紛も聞こえだす。破滅型AV女優・杏樹紗奈の可視化もカタギの我々に衝撃を与えた。そんな中、可笑しなことだが、私と月刊DMMは、「そもそも単体AV女優は何人いるのか」の検討をしていた。加藤鷹の引退も思い返される2013年のAV業界を振り返る。

目次

AV女優は何人いるのか?論争

2010年代のCA長期専属を代表する希美まゆ

突然だが、AV女優は何人いるのだろうか。最近のデータでだが、2022年の記事では、AV人権倫理機構理事・河合氏が「1年間の実働女優数は2000人」と主張している2012年にマークスグループはAV女優は10000人、そのうち単体女優が700人いるとしたが、その根拠は示されていない。

しかしながら、単体女優については専属認定された女優を数え上げれば人数は確定すると考えられる。こうしたカウントがこれまで意外にもなされていなかったのは女優露出の公開範囲を限定する「パブ」の影響があったり、雑誌の各メーカーへの忖度があったためだろう。

そこで私は、2013年2月にブログ「AVメモ」で単体女優をカウントした。その結果、163人の単体女優がいることがわかった。レーベルごとに見ていくと、アイポケが23人、ムーディーズが12人、エスワンが11人となっており、アウトビジョンが圧倒的に多いことがわかる。なお当時はアリスJAPAN・マックスエーがまだDMMに屈服しておらず、小向美奈子マネーで17人もの多くの専属を囲っていた。

私の企画に影響を受けたのか、月刊DMM2014年1月号では2013年11月時点の単体女優をカウントするという企画を敢行、その数は167人であった。その月刊DMM調べの、メーカーの内訳を円グラフで示す。

月刊DMM2014年1月号にもとづく、2013年11月の専属の内訳。専属女優はAV業界で170人程度しかおらず、うち7割ほどをアウトビジョンが擁しており、単体作品に関して圧倒的な一強であることがわかる。

この調査によると、アウトビジョン=DMMグループ=CAが専属女優・113人と全体の7割を占めている。2013年末までにSODはさまざまな不運が重なり専属が壊滅したった6人しか残っていなかった。SODはまさに”風前の灯火”だったのである。また、2011年の小向美奈子特需に沸いたJHV-マックスエーは葵つかさ、小島みなみ、川上奈々美ら20人の専属を維持していたが、このすぐ後、切り崩し工作が炸裂し、CAに移籍するものが続出した。

なお、この160-170人という狭い専属枠の中で、2年以上の契約を維持している「長期専属」は、wikipediaによると100人程度である。より狭き門である長期専属の椅子を勝ち取れなければ引退か企画単体転向か、という世界なのだ。

のちに2020年代にはWILLによる他社牽制と計画的撮影を問われるAV新法対策で、専属企画単体「トリプル専属」がムーディーズレーベルを軸に多数展開されていくが、2013年当時は企画単体から専属に戻るケースは非常に例外的だった。これが「つぼみW専属」の衝撃の伏線なのだ。

つぼみW専属の衝撃

つぼみのCA・W専属は大きな衝撃となった。

2012年にAV30で1位に輝いたAV女優・つぼみ。つぼみは企画単体として総集編、ブルーレイを含めると1600本以上の作品に出演していた(2013年8月13日調べ)。

しかし、8月1日、つぼみがムーディーズおよびワンズファクトリーW専属(いずれもアウトビジョンのレーベルであるため、つぼみはアウトビジョン専属ということになる)となると発表されたのだ。専属期間は9月からであった。

SODグループは企画メーカーが伝統的に強く、企画単体であったつぼみの撮り下ろし作品を70作も発売していたこともあって、つぼみのキャスティングが絶たれることによって大打撃となった。つぼみを度々起用してきたTMA(撮り下ろし75作)のような独立系メーカーも大きなダメージを受けたといえよう。

こうした企画単体を専属として囲い込む戦術は、及川奈央、麻倉憂、友田彩也香らを専属としたKMPが本家ともいえるが、その手法を忠実に学んだWILL・ムーディーズレーベルが現代AVにおいて”トリプル専属”乱発を展開していくのである。

SOD・KMP・プレステージの動向

2012年に4大メーカーとしていたCA(卸としてTIS)・SOD・KMP(卸としてトップマーシャル)・プレステージの2013年の売上高グラフを示す

帝国データバンクによる2013年度の売上高。アウトビジョンはTISだけで300億円以上の売上となっており、SODの実に二倍の規模を誇る。

TISはSODの約二倍の売上高を誇っていた。この寡占的傾向は、DMM(のちFANZA)のプラットフォームビジネスと相まって加速していく。しかも2013年はSOD・KMP・プレステージが全て不調に見舞われていたのである。ではどのようにしてこれら3社は打ちのめされていったのだろうか?

SOD

2013年のSODを代表する橘梨紗は19年にV消しした。

2013年、SODは存亡の危機に立たされていた。2月新人橘梨紗は爆発的なセールスを記録したものの、なぜか長期専属にはならず6本で引退した。橘は19年5月にV消ししており、なんらかの深刻なトラブルがあったものと想定される。3月デビュー坂口みほのも10月からエスワンに移籍、マインズ紗藤まゆはパッとせず、12月新人・上原紗弥果は発売中止となった。ちなみに14年1月新人高塚れなも発売中止となっている。女優とのAV被害に関連したトラブルが連発したのではと憶測が飛び交ったのであった。

高橋がなりは2012年までの6年間の間に農業の失敗で15億円を失っていた。2013年、SOD社長・菅原千恵が退社していたが、12月上旬、SODから高橋の復活がアナウンスされた。高橋の復活は2年間とされ、後継者として「2年後の取締役候補」を募集し、2年後には「取締役としてソフトンデマンドを経営」させると宣言したのである。

その後、2016年6月には後継者として野本義明がSOD社長に就任した。当時はAV出演強要問題が大きくクローズアップされ、逮捕リスクも高まっており野本社長就任は急がれたのだろう。

KMP

藤井シェリーの離脱はKMPに致命的打撃を与えた。

KMPは藤井シェリー・成瀬心美・麻倉憂・神咲詩織の有名専属ラインナップで2013年を乗りきろうと画策した。しかしながら、藤井は13年1月作品を最後にフェードアウトした。藤井は専属契約はあったのだが、事情により撮影できなかったとKMP北昭夫氏は語っている。なお藤井は14年10月にShellyとしてアイポケで復活した。

さらにKMPでは12年9月に専属とした成瀬も体調不良で13年3月に休業するなど、不運が続いた。麻倉は13年3月にKMP専属を外れたのち無修正AV出演していたが、戦力不足に危機感を覚えたKMPはなりふり構わず12月に再専属としたのである。しかしながら悲報は続く。神咲詩織は14年3月、ムーディーズへ移籍。KMPの専属は壊滅状態となった。

こうして、KMPの栄光が再びおとずれることはなかったのであった。

プレステージ

プレステージの最盛期2012年12月作。セールスは振るわなかったようだが、専属女優の充実が窺える。しかし13年に入り、悲報が続いた。

2013年、明日花キララは7月からCA(エスワン)に移籍、加藤リナは3月に引退、あやみ旬果は9月から撮影休業、桜ここみも14年3月からCAに移籍となり、看板が軒並み失われることで壊滅的なダメージを被った。史実では鈴村あいりが看板として盛り返していくのだが、当時は絶望的な雰囲気も漂っていたのである。

プレステージは弱気になったのか、従来DVD発売の1ヶ月後にDMMで動画配信していたものを、7月以降同時配信に切り替えた。これはプレステージのDMMへの屈従と見なすことができる。この体制は21年のプレステージのFANZA離脱まで続くことになる。

以上のように、CAによる引き抜き工作と各社の自滅によってCAの一強体制はますます顕著となっていた。2013年、CAが圧倒的実力で天下を取ったのである。

麻美ゆまの闘病

麻美の告白にユーザーは震撼した。

2013年6月6日、麻美ゆまが衝撃的なツイートをおこなった。麻美が卵巣に腫瘍が見つかり手術を受け、抗がん剤治療をしているというのである。

麻美が腹部の張りと体調不良を感じ始めたのは1月。2月頭の検査で卵巣がんの疑いありと判明したという。腫瘍には良性と悪性があるが、その中間の「境界悪性腫瘍」であった。2月25日両卵巣と子宮を摘出、直腸にも転移があったが、人工肛門をさけるため摘出しなかったという。

直腸の腫瘍のため抗がん剤の治療を行い入院。元気なときから8キロくらいやせ、抗がん剤の副作用でしびれ、吐き気、脱毛があった。8月7日に抗がん剤治療を終了し再発はないという。彼女が子供を授かる可能性は失われてしまったが、その痛みを乗り越え、今も元気に過ごしている。

無修正AV出演で逮捕

かつて有名女優がカリビアンコムなどで多数無修正AV出演していたが、その前提として、「米国サイト」からの配信だから違法ではない、という建前があった。しかし2013年の摘発により、その思い込みは否定されることになる。

2013年、無修正AVには多数の有名AV女優が出演していた。アメリカのサイトからの配信だから、無修正でも問題ない、という通説がまかり通っていたのである。しかしながらその幻想が打ち崩されるニュースが飛び込んできた。

無修整のアダルトビデオを撮影させたとして、静岡県警沼津署などは30日、横浜市港北区新吉田東7の非常勤講師、菅原瞳容疑者(27)をわいせつ電磁的記録記録媒体頒布幇助(ほうじょ)容疑で逮捕したと発表した。菅原容疑者は都内の小学校に勤めていたという。

 逮捕容疑はインターネットに配信することを知りながら、AV俳優として撮影させて手助けした、としている。容疑を認めているという。

毎日新聞2013年12月1日

逮捕された女優は、純野静流という企画女優であった。無修正AVは違法、出演すれば逮捕。という警察のメッセージが轟いたのである。しかし懲りないAV村は出演をやめず、のちに逮捕者が続出することになる。

AV被害を告発する女優たち

マックスエー専属・松田千里

2013年には、AV被害を訴える女優も相次いだ。マックスエー・5月新人松田千里は10月に「関係者からパワハラ・セクハラを受けている」とブログで告発し引退を宣言した。AV出演自体、大きな苦しみとなるのに、パワハラ・セクハラが重なっては、持たない。今の考え方からすれば重大なAV被害であり、人権侵害である。

病気をしました。この先仕事ができなくなってしまいました。

関係者から、パワハラとセクハラがありました。私にはもう、耐えられませんでした。

(この文章を見て思い当たる方は、怒り心頭に発するのでしょうが、私を陥れる事よりも貴方の立場を大事にしてください)

http://archive.is/qbfnl

hmp専属・神谷まゆ

12月31日、CLAP所属hmp専属・神谷まゆは引退にあたり、AVに対する痛切な嫌悪感を吐露した。神谷はカンパニー松尾に2度も撮影されるなど不遇であった。

私はこのお仕事に出会ってたくさんの幸せをいろんな人にもらうことができました。

でも…100%幸せで嬉しかったと言ったら嘘になります。

いろいろ辛いことも悲しいこともあったし、今考えただけで吐気がするようなことも正直ありました。

http://archive.is/qjbS5

AV被害の告発は、断片的であり、一体何があったのか知る術はない。しかしながら性搾取の構造の中で意に沿わない性行為をカメラの前で余儀なくされた、という心の傷は決して癒える事はないのだ、という事実を、我々ユーザー・元ユーザーは厳粛に受け止めるしかないのだ。

工藤明男こと柴田大輔と松嶋クロスの内紛

関東連合・柴田大輔は工藤明男名義で関東連合本を発表し、「半グレ」の名は世に轟いた。柴田は”実業”としてAVプロダクション業に進出、イオンプロモーションを経営し、ティーパワーズの前身・マッシムにも出資していた。ロータスグループも柴田の影響下にあったとする説もあるが、実は根拠は定かではない。2013年、柴田は松嶋クロスとの対立を深め、深刻な内紛が起きていることが白日の本となる。のちに柴田は精神を病み、2021年、自ら刃傷沙汰により自裁した、とされるがいかにも不可解な死と言える。

AV事務所・ティーパワーズの前身、マッシムの創業者が関東連合・松嶋クロスであることはよく知られているが、このマッシムに出資していたのが、同じく関東連合メンバーの工藤明男こと柴田大輔である。柴田はイオンプロモーションも経営していたこともあって、AVプロダクション業と関東連合の関係は深い。

2000年ごろから、レンタル系AVメーカーと結びつきが強い老舗AV事務所(その多くは企業舎弟)からの女優供給に制約を受けたセルAVメーカーに女優供給をおこなってきたのが関東連合系のAV事務所なのである。

柴田は工藤明男名義で、2013年6月27日に『いびつな絆 関東連合の真実』を上梓し、関東連合を赤裸々に語った。著書では「トーヨーボール事件」や「海老蔵事件」、「フラワー事件」の内情が明らかにされ、世に「半グレ」の脅威が知れ渡ったのである。これを機に柴田は著書・ブログを通じて積極的に言論活動を行うようになっていく。

そして7月8日、柴田は公然と松嶋を批判するに至ったのである。

松嶋の罪報デカイよなー。あの陰湿な写真は載せられないけど、ああいうことやるから怨恨が残り、世間からはより凶悪な目で見られ、警察からは不必要な警戒をされるんだよな。それでいて太一のプロモ手伝っていたからレコード会社のA社取引停止って、企業コンプライアンス以前の問題だろ。

 アーティスト活動?をするのは勝手だが、周りを巻き込むのはやめてほしい。公人ですので芸名は書かせてもらいます。

エイベックスと取引停止となったとされる音楽プロデューサー・松嶋クロスは、重鎮・松本和彦と共にロック座のAV女優キャスティングとAV業界統制に傾倒していく。

その後、2018年松嶋が女優を風俗に引き抜いたとして男性を脅迫した件でAV事務所MMR(小向美奈子・川上奈々美らが所属していた事務所)社長・河野哲大と共に逮捕された際、松嶋は住吉会系暴力団員として報道された。半グレが本職となっていったのである。

一方の柴田は『破戒の連鎖 〜いびつな絆が生まれた時代』など著書を相次いで発表、アベマなどのメディアにも露出するなどしていたが、かつての最高幹部・見立真一からの報復を恐れ精神に異常をきたし、2021年に自ら刃傷沙汰で自裁したとされる。アウトローの仕切るAVプロダクション業の闇は依然として晴れることはない。

破滅型AV女優・くるみひなこと杏樹紗奈

エスワンマックスエーW専属・くるみひなとして出発した杏樹紗奈は破滅的AV女優として鮮烈な印象を残した。

お騒がせAV女優・くるみひなこと杏樹紗奈は2012年にギャラを赤裸々に公開し話題となったことで知られる。しかしながらW専属であってもさほどの手取りは得られなかったようで、またホスト・SHUNに数百万円単位で散財するなどしており、下記記事の段階で貯金は390万円程度しかなかった。(それでも同年代としては多いとは思うが…)

2013年、杏樹はほとんどスカトロのようなハードなVに出演したのち、オファーを無くし一旦休業状態となって職を転々としていた。その際、杏樹は違法ドラッグ中毒のヒモ(にゃも)と同棲していたが、紆余曲折あってヒモを自宅から追い出したのである。

しかし、逆ににゃもに自宅のガラスを割って侵入されそうになったため警察に通報。ヒモは釈放されたが、その後すぐ別のマンションに侵入しようとして逮捕され、起訴は免れない状況となっていた。杏樹は方針を覆し、示談金を代わりに払ってヒモを助けようとした。

示談は成立したものの、ヒモは小菅(東京拘置所)行きとなる。13年7月、杏樹は妊娠7週目であることをTwitterで告白。当初子供を生むつもりだった杏樹は示談金の肩代わりもあり、AV復活を承諾した。さらに金づるの熱狂的ファン・西門とも会って金を工面した。しかしながら、最終的に子どもはティーパワーズのデリヘル・虎の穴の客の子だと告白。13年8月、ヒモと別れ堕胎することを決断した。

杏樹はその後、精神病院に入院し電気治療を受けるなど壮絶な人生を送ったが、今は母として、嘘のように堅実に暮らしており、オープンチャットもやっている。Xを見ればわかるのだが、大学教授の父親譲りか読書家である。いつか自伝を書いてほしいものである。

終わりに

こうして2013年を振り返った時、我々AVユーザーが最後にAV業界論を無邪気に語れたのがこの年だったのかもしれないと思わされる。14年以降、とめどなく押し寄せるAV業界の不祥事(アウトロー、逮捕者、AV被害)の悲報がAV村を圧倒していくのであった。

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この記事を書いた人

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