
コロナワクチン接種開始と東京五輪開催で記憶される2021年。AV業界では一体どういった動きがあったのだろうか?
AV男優・沢木和也死去
AV男優・沢木和也。21歳だった1988年にAV男優デビューして以来、長年にわたりアダルトビデオに出演してきた人物である。そんな沢木が癌に冒されているとカミングアウトしたのは2020年4月11日であった。
公表します!
食道がん+下咽頭がんにより来週には入院します。 食道がんが大分進んでいるので、手術の選択肢は無く化学放射線治療になります。 公表する必要は無かったかも知れないけど黙って消えて行くのは無いかな?って思いました。男優復帰は置いといて父親復帰を目指します。息子を見ていたい。

沢木が癌で余命1年程度ということを知ったM氏(松本和彦?)は、先輩である沢木の助けになりたいと考え、側近の二人(荒井禎雄、草下シンヤ)を呼び出し、どうすれば助けになるのか6月20日に沢木も交えて協議した。その結果、彼らはクラウドファンディングによる「治療費」集めを沢木の「自伝本」出版という名目で行うことにしたのである。
その「伝説のAV男優 沢木和也 『終活』 出版プロジェクト」は2020年11月30日に成立し、約200万円の資金を集めることができた。『終活』というように、残された時間は限られていた。荒井は出版に向け着々と沢木の取材を進めていったのである。

荒井は予備調査で、加藤鷹の情報ならいくらでもインターネット上で拾えるのに対し、沢木和也の情報はほとんどないことに気づく。M氏によれば沢木は他のAV業界人と付き合いを避けていたところがあり、親しい人物は限られ、あまり沢木の素顔は世に広まっていなかったのだ。
若き日の沢木はスポーツ新聞の三行広告を見てビニ本やAVに応募するも、その実はゲイバーのウリ専ボーイだったり、ゲイビデオの撮影だったりと悪い大人による「騙し」を何度も経験した。
何度も痛い目を見ながら、ハタチの沢木は銀座で黒服として勤務していた。このとき管理していた女の彼氏の兄がAV男優だったので紹介を受けアテナ映像に面接に行き、ついにAV男優デビューを果たしたという。その後、芳友舎や宇宙企画にもつてを作っていく。
デビューして1年ぐらいの時に、沢木はアリーナの『ナンパスペシャル』に出演する。この経験を活かし、監督兼男優として出世作『ナンパ王国』を始めた。これにより「ナンパといえば沢木」というイメージが確立されたのだ。
その後沢木は覚醒剤により逮捕され懲役1年執行猶予4年の判決を受ける。紆余曲折を経て、沢木は徐々にスカウトなどの「女衒業」にシフトしていった。レンタルからセルへの制作会社の切り替えに乗れなかったこともあり、沢木は男優業を一旦休止した。
右翼活動に傾倒するなど「暗黒時代」の30代を過ごして、アラフォーになった沢木は生計を立てるため男優業に復帰する。ナンパ物を再開するとともに演技派オヤジキャラとしての需要も開拓していったのだ。
こうして再び第一線で多数のビデオに出演していた沢木であったが、2020年2月下旬、撮影で発声がうまくいかなかったり胸の痛みや喉のつかえを感じたという。AV女優・大島優子の勧めもあって3月9日に呼吸器科を受診。異常なしと診断されたものの、違和感を拭えなかった沢木は、かかりつけ医で胃カメラを撮ってもらったところ、癌が見つかる。
紹介状をもらい、3月24日に大きな病院で検査したところ食道癌のステージ4の診断を受け、喉にも癌が見つかった。これを受け、冒頭の国立がん研究センター入院となったのだ。
沢木は抗がん剤や放射線、オプジーボによる治療を受けがんとの一年以上の闘病生活の果てに2021年6月19日、永眠した。
夫 沢木和也は1年3ヶ月病と闘っておりましたが本人と家族の願いも虚しく2021年6月19日他界いたしました 故人の遺志により葬儀は家族葬にて執り行いました 応援してくださいました皆様 関係者の皆様 生前の多くの方からのご厚意に深く感謝申し上げます 2021年6月27日 妻
著書『伝説のAV男優 沢木和也の「終活」~癌で良かった』は6月29日に発売された。沢木のAV業界への「遺言」を抜粋しておく。
- AVは「まともな仕事」ではない。恥ずかしげもなく大っぴらに人前で言うな。
- AVは法的にはさまざまな法律に引っかかっており、いつでも逮捕・摘発される。
- AV女優に非道な真似をして業界の強面(松嶋・松本?)に怒られて警察に駆け込み被害者面するAV男優(イセドン・清水・森?)はクズ。
- 男優は貯金しろ。
- 性病に気をつけろ。
- AV業界は反社や詐欺師がゴロゴロいるから気をつけろ。
- 無修正動画を売り捌いた南波王監督はクズ。
こうしてみると稲井大輝やアケミンなどの御用AVライターの「AV業界はクリーン」「親公認AV女優もいる」「AV女優は人気の職業」といった言説がいかにポジショントークであったかがわかるだろう。
私はこの「沢木の終活プロジェクト」でのAV業界の互助の篤さに感銘を受けた。先輩・沢木を助けようと奔走したM氏と沢木を書に描き出した荒井氏。「AV禁止」を目指す我々とAV村の彼らとでは、根本的なところで意見は違うが、彼らは彼らの筋を通しているのである。
プレステージ・SOD、FANZA離脱の衝撃

FANZAは、圧倒的シェアを背景にAVの売上の7割を手数料として徴収していると言われている。実際、宇佐美典也(@usaminoriya)のツイートによると、62%のマージンを取っているという判例が存在するという。
https://www.translan.com/jucc/precedent-2020-02-19b.html
こうした法外に高いFANZA税に対して、SOD・プレステージ・マキシング等の非WILLメーカーが不満を募らせていたのは想像に難くない。2021年、FANZA脱離の動きが活発化したのだ。
まず2021年2月、プレステージ作品のFANZA取扱が3月31日で終了することがアナウンスされた。ついでマキシングが5月31日でFANZA離脱。さらに9月になって、7月発売分以降のSODクリエイト作が取扱中止になった。
SODクリエイトの離脱にはSODクリエイト作品の倫理審査団体がOCCNに変わったことも関係している?などといった憶測も飛び交ったが詳細は不明である。
なお、2022年3月1日にSODクリエイトはFANZA取扱再開。また、2023年5月1日にマキシングはFANZA復活している。プレステージは2022年8月12日にFANZA通販でDVD販売は再開したものの、MGSが好調なのか、動画配信については節を曲げず、FANZAに戻ってくる気配はなさそうだ。
FANZAの高い手数料徴収は非WILL系メーカーに出演するAV女優の搾取の原因となるとの批判の声も上がっている。特に自前サイトで2020年に情報漏洩の不祥事を起こしたSODは、圧倒的に配信サイト構築に出遅れており、プレステージよりもはるかに苦境に陥っているのだ。
FANZAがSODを救済すべき、という考え方もあるのかもしれないが、「SODは廃業せよ!」と言いたくもなる「無修正流出騒動」が発生したのである。
SOD無修正動画大量流出事件

2018年に起きたAV監督・南波王の監督作の無修正動画が大量流出した騒動は、さまざまなメーカーのVに被害が及びAV被害の深刻さが露呈した。
しかしながら、2021年10月に起きたSOD無修正動画大量流出騒動は、過去最大級のタイトル数の流出であり、主にSODの無修正動画が流出して海外サイトで販売される騒動となったことから、SODの管理の杜撰さが批判されたのである。
文春の記事によると、流出したタイトル数は120本。うち50本程度がSOD作だったという。紗倉まなを筆頭にSOD長期専属は軒並み無修正動画が流出してしまった。

SODはダクションに賠償したのであろうか?南波王事件は南の犯行と明確に言えるが、今回の事件はSOD内部の人間の犯行なのか、ハッキングなのか。詳細は闇の中である。
いずれにしても、動画の杜撰な管理をしているSODのようなメーカーにモデルを派遣するのは極めて危険と言わざるを得ない。SODは自称「適正」メーカーなら、説明責任を果たし再発防止策を取って当然と思うのだが、そうした動きは全く見えてこないのであった。
元プレステージ専属・結城るみな、覚醒剤で逮捕
2021年9月に元プレステージ専属・結城るみなが覚醒剤所持の容疑で逮捕された。

逮捕後、結城さんは46日間を拘置所で過ごし、懲役2年、執行猶予3年の判決を受けました。

初犯ということで執行猶予がついたものの、再犯の可能性が高いのが薬物の恐ろしいところである。AV復帰を目指していると結城は語るが、現時点ではmyfansでの活動が主なようだ。
終わりに
沢木の死とFANZA離脱騒動、SOD無修正流出騒動。さらにはAV女優・結城るみなの逮捕。着々と法規制は迫ってきていた。次回は激動の2022年について見ていきたいと思っている。
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