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2016年のAV業界を振り返る

AV出演強要問題が一挙に社会問題となった2016年。3月に伊藤和子弁護士のHRN(ヒューマンライツ・ナウ)がAV出演強要問題に関する報告書が発表されると、マスコミでもこの問題が大きく報道され、国会・政府も対策に乗り出していく。

5月には世間を震撼させるニュースが飛び交った。AV男優・岩崎友宏が女性アイドルを滅多刺しにする事件を起こしたのである。

6月にはマークス所属のAV女優FがAV強要を訴え、マークス会長の村山典秀を含む3名が逮捕された。摘発に対しマークスグループの女優は一斉に反発。被害女性Fへの誹謗中傷は苛烈さを極め、血も涙もないネットリンチの前に、AV業界の非道さが一段と印象付けられたのである。

Fの告発に関連して、7月にはムーディーズの有名シリーズ『バコキャン』が公然わいせつの疑いで摘発され、CA社長・齋藤仁一やAIKAら女優計52人が書類送検された。10月には出演女優のAV事務所6社の社長が有害業務派遣で書類送検される。

激震が連発する中、AV強要を告発する女優が続出していく。7月には香西咲がアットハニーズ・青木亮によるAV出演強要を告発、11月には同じ事務所のほしのあすかも告発した。

さらには紅音ほたる・雨宮まみの死、風俗店への派遣によるAV事務所の摘発もあった。

そんな最中、コトリッチこと古都ひかるが全AV女優に先駆けてV消しを遂行する。

こうした危機的状況に対して、AV業界サイドでは川奈まり子が御用団体となるAVANを結成し対抗を図ろうと画策するが…。2016年のAV業界を振り返る。

目次

伊藤和子弁護士のHRNによるAV出演強要問題報告書の波紋

HRN(ヒューマンラインツ・ナウ)という人権団体がある。当時、伊藤和子弁護士が事務局長を務めていたこの団体が、3月にポルノ被害と性暴力を考える会(現・ぱっぷす)の協力のもと作成したのが「日本:強要されるアダルトビデオ撮影 ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、 女性・少女に対する人権侵害」である。

この報告書では、若い女性がAV出演強要の被害に遭ったり、撮影現場で非道な撮影被害を受けたりといったAVによる人権侵害が多数報告されている。その内容について列挙してみよう。

  • 法外な違約金を請求され、出演を強要されたケース
  • 暴力的な撮影が行われたケース
  • 密室での説得で出演を強要されたケース
  • 自殺に追い込まれたケース
  • 路上スカウトでタレント専属契約をしたが、AV の面接に派遣されたケース
  • テレビ出演を偽装して撮影されたケース
  • 法外な違約金の支払に応じざるを得なかったケース
  • 無修正動画として販売されたケース
  • 宣伝販売方法について虚偽の説明をされたケース
  • AV 業界から長年抜け出すことができないケース

詳細については報告書を確認してほしいが、AV出演強要は非常に深刻な問題であることがわかる。AV業界は女性に虚偽の説明をしたり、違約金で脅したりして残虐な撮影をするなど、非道のかぎりを尽くしていたのだ。こうした被害を防止するために、HRNは監督省庁の設置や、法規制を呼びかけていた。これがのちに2022年のAV出演被害防止・救済法として結実することになる。

報告書に対しAV村では、ディープスで『アナル拷問』シリーズを散々やって女優に非道を続けていたアケミンが「信じられない」などと白々しい嘘をついていた。

一方で、中村淳彦は「フェミニストによる壊滅に向けた攻撃」だと危機感を募らせ、全てのAVがクリーンであることの証拠の準備が必要と主張した。これはのちに「適正AV」につながっていく考え方である。

少しおいて5月26日、AV出演強要問題を考えるシンポジウムではSOD藤丼監督の騙し討ちによってVで飴を舐めさせられパケにまで使われた松本圭世アナウンサーが出席。松本は現役アナウンサーがAV出演していたというかどで番組を降板させられたとしてAV被害を訴えた。当事者である松本アナの発言は非常に重いものであった。

このシンポジウムは欠席したものの、AV業界団体であるIPPAは書面でHRNに健全化に向けた協力を要請するなど、歩み寄りも見られた。

IPPAの書面を引用する。

「前略、私共はNPO法人知的財産振興協会と申します。(略)

御団体が、平成28年3月3日に発表された報告書は、発表と同時に弊協会でも精読させていただいております。この中で報告されている被害の実例は目を疑うものであり、被害を受けたご本人様、関係者様の心痛は察するに余りあるものです。

この報告書につきましては、業界関係者を始め、様々な方々がご意見を発信されておりますが、弊団体としましては、被害に遭われた方々が実際に存在しているということに関してはAV業界は重く受け止めるべきであり、改善の必要がある、と感じており、制作会社の団体として何ができるのか、何に取り組むべきかの検討を進めておりました。

現在、その検討を進める過程で、御団体のご協力をお願いできないかと考えております。 御団体は、AV業界内の私共では見えない側面が見えておられると存じます。内外両方から見えるもの、知っていることを合わせ調整することにより、今回のようなAV被害をなくしていくシステムを整備し、AV業界の健全化を一歩進められるのではないかと思います。 御団体におかれましては、弊協会との意見交換などの協力をお願いできれば幸いでございます。以上、簡単ではございますが、弊協会の考えをお伝えさせていただきます」

IPPAも、AV批判の激しさを知りHRNへの接近を画策したのである。懐柔工作とも取れるが、私は、AV業が本当にカタギと同等と思い込んでいたIPPA連中が純粋に女性の悲運に同情したともとってしまった。それは自らが加害者であることを自覚しない加害者の姿であって、一層の恐怖を駆り立てる。

しかしながら、この時期、すでにCAへのガサ入れが入っていたり、アイドル滅多刺し事件の犯人、岩崎友宏がAV男優であったことが判明するなど、世を震撼させる話題が連発し、IPPAとHRNの連携も進展はしなかった。IPPAのHRNへの協力要請は、「時すでに遅し」の感が否めなかったのである。

AV男優・岩崎友宏によるアイドル滅多刺し事件

陰湿かつ残忍な犯行に及んだ岩崎友宏は有名女優のVにも出演するAV男優であった。

2016年5月21日に東京都小金井市で発生した小金井ストーカー殺人未遂事件(通称:アイドル滅多刺し事件)。この犯人である岩崎友宏(27)は大学生アイドルの冨田真由さん(20)にストーキングし、果てに殺人未遂に及ぶなどその陰湿かつ凄惨な犯行に世は騒然となった。富田さんは一命を取り留めたものの、深刻な後遺症が残った。

その岩崎が、ムーディーズの波多野結衣のV『筆おろし童貞卒業バスツアー』に出演していたことが明らかとなり、衝撃が走ったのである。本作はシリーズとして人気も高いものであったが、岩崎は「本物素人」として出演していた。

岩崎が出演していたV。人気シリーズであるが、この波多野出演作はあえなく発禁となった。
Vでの岩崎。

2017年に岩崎には懲役14年6か月の判決が言い渡された。岩崎の手口に恐怖を感じた人も多かったのではないだろうか。やぶれかぶれとなった岩崎は最後の晩餐とばかりにAV出演し快楽を悦しんだのか。そしてそんな凶悪犯が勝って気ままに出入りできてしまうようなザルのような業界がAV業界なのである。

マークスの破滅—FとAIKA

橘ひなたを全面に押し出したマークスのホームページ。この巨大プロダクションはFの告発によって壊滅し、有名女優はティーパワーズをはじめとする同業他社に移籍した。元マネージャーらが立ち上げたLINX(株式会社MGO)が残党を吸収し、今に至る。

大塚咲、有村千佳、初美沙希、橘ひなた、あやみ旬果らを排出した巨大プロダクションマークスグループ。ニコ生で精力的にモデルの配信を続けたり、取締役であったライターアケミンが宣伝塔としてイベントを行うなど、PRにも長けた事務所であった。

しかし突然の摘発の知らせが飛び込んでくる。6月11日、マークスグループ会長・元社長村山典秀と社長高山祐次こと古指隆士、マネージャー高橋慶将の合計3人が逮捕されたのである。さらに驚くべきことに、マークスグループのファイブプロモーションのみならず、メーカーのCA・ピエロも家宅捜索を受けた。容疑はいつもの「有害業務紹介」とされたが、報道では、AV強要を訴えた女性がいたことが明かされた。

なお、別の報道では女性が警察に相談したのが2015年12月だったという。この知らせを受けて、一体だれがAV強要を訴えたのか?と騒然となったのである。後述するように、AIKAがこの女性が誰かを公開する暴挙に撃って出る。

自分の事務所の摘発に対し、マークス所属・初美沙希は下記のようなツイートを連投してマークスグループの総意として「被害女性は彼氏への説明に窮して強要を告発した」と主張した。

言わなくてはいけないことを言う許可をマネージャーに取った。

今回の件、色々知ってます…(過去のことも)
現役時代やる気満々に活動してたある一人の元女優が辞めた後、今の彼氏に「あの時は無理矢理やらされてただけなの!」って変な言い訳したら、その彼氏が「なら警察行って作品消させろ!」って騒いで。警察もそれ知ってるはず。少なくとも、この件の真相。

一部の外部の人がその元女優を上手く利用して今こうなってる。問題もあるとは思いますが、少なくとも「この件」に関してはそんな感じです。
悲しい。残って自分の意志で活動してる女優がいるわけで。
個人への攻撃になっちゃうのでこれ以上は言いません。いろいろと察してくださるとありがたいです。

もし芸名言えば、知ってる皆さんは
「強要?嘘でしょ?!あの娘なんて超楽しんで女優やってたのすごい有名じゃん!」
って全員思うはずです。。

出しませんけど。
マネージャーも私も泣いたよ。悔しくて。個人の勝手な都合でそんな。。
この件に関してはそういうことです。

言う役割、終わり!

Fの出演本数が440本という多数であったことも話題となり、かさいあみのように「そこまで出演してるんだから強要はないんじゃないか?」「AV業界への恩を仇で返すな」といった声もあがった。

しかしながら、私の考えは全く逆で、本数が多くなればエグいVも多くなり、勝手な総集編も濫造されたりと、不本意なことが多かったと思うのである。エグいプレイを散々させておいて「楽しんでやってた」だの「個人の勝手な都合」というのは残酷すぎないだろうか?

なお、当時は裏取りできず取り上げなかったが、私のブログにはFの彼氏と思われる人物から非常に詳細なタレ込みが寄せられており、「AV出演の出発点の段階で強要があったとは考えていない」とした上で、「(被害女性は)強引なNG解禁に不満を持った」「マネージャーと意に沿わない性交をさせられた」ことが告発の原因と書かれていた。

だが、そうした声は他の女優には届かず、業界内の噂話ばかりが流布していく。Fと同じチームGEHINメンバーだったティーパワーズ・大槻ひびきは「悲しいよ。自分の都合で嘘を細工して周りを巻き込む人はもう友達じゃないよ。あんなに楽しそうにお仕事頑張ってたのに。」と断定。マークス・あやみ旬果は「表に出たことが真実とは限らない。嘘、勘違い、妬み、第三者。それでどれだけ関係のない人間が迷惑するか。すごい迷惑だ。」と主張して告発を迷惑だとした。

今思えば、心ない言葉の嵐というほかない。だが普段は善良そうな女優たちがここまで主張するのは、どこかでAV出演に対し不満も抱えている自分を認識していて、それでもAV村への忠誠は揺るがないんだ、という発信をしなければならないという強迫観念もあったのではないか。

AIKAは世界で初めてFの実名を公開した。そのときのツイキャスのキャプチャ。AIKAは本中で非道なAV出演被害を受けていたが、それゆえに、自分はAV村を告発したりはしないとアピールしようとしたのだろう。

そんな中、マークス所属のAIKAが6月13日にツイキャスで「マークス所属女優Fが訴えた」と世界で初めて公開した。このツイキャスにはマークスのマネージャーも参加しており、Fへの事務所ぐるみでの組織的な報復とも取れる状況となっていたのである。

2015年に本中で騙し討ちの100人中出しものに出演させられVで号泣するなど深刻なAV被害に遭っていたAIKAは、自分はAV業界に忠誠だというアピールからか、Fや伊藤和子弁護士への暴言を連発していく。被害女性に共感した今井キキに対しては「は?お前敵?」などと凄むといった暴挙も見られた。

こうした血も涙もない状況に対し、伊藤和子弁護士は「AV被害女性をSNSやツイキャスなどで名指しし罵倒したAV女優が多数いる。これはネットリンチのようなものだ」と発信する。

これによってようやく業界人からの表だった罵詈雑言は鎮静化したものの、掲示板ではFへの誹謗中傷が止むことはなかった。この時期の6月15日ごろに、Fの440本のVはDMMから削除されていった。ここまで大規模なV削除はAV史上初である。

東京簡裁は7月1日、労働者派遣法違反(有害業務派遣)で村山会長ら3人に罰金100万~60万円、マークス社に罰金100万円の略式命令を出した。7月3日のAIKAのツイキャスではマークスが解散となったこともあかされた。元マークス女優は他事務所に流れていく。すぐ下で触れるバコキャン摘発に巻き込まれ、AIKAも最終的にはティーパワーズに移籍した。

マークスの残党のマネージャー、佐々木連(向井社長?)、佐々木庸、小林重美、石井義人らは7月11日、LINX(株式会社MGO)を立ち上げ、残党を吸収しながら今もAVプロダクション業を継続している。摘発されても構わず屋号を変えたり、別会社を設立して業界に残り続けるのが彼らの渡世のやり口なのである。

DMMグループCA社長・齋藤仁一と女優たち、公然わいせつで書類送検

公然わいせつとして摘発された『バコバコ中出しキャンプ2014』

DMMグループのCAは業界最大のシェアを誇る巨大AVメーカーである。そんなCAにはバコキャンというキャンプ場で撮影する大人数ものの人気シリーズがあった。これが公然わいせつであるとして摘発されたのだ。予兆は5月28日の松本和彦のツイートにあった。CA社長宅に大規模ガサ入れがあったというのである。

CA社長といえば齋藤仁一氏である。余談ながら、うしじまいい肉がエスワン広報をしていた時、齋藤という苗字が一緒でかぶっていたということで社内でうしじまは下の名前で呼ばれていたのだという。

ツイートにある大手プロダクションはマークスであったわけで、ツイートの信憑性は高まった。松本和彦はAVは健全でも潔白でもないしあくまでグレーであることを主張し、クリーンぶる業界人やAVライターたちを批判したのである。

そして7月8日、衝撃のニュースが飛び交った。8日までに公然わいせつの容疑で、AVメーカー・CA齋藤仁一社長と関係者計7人と女優、男優ら31人、マークス社長ら2人と撮影スタッフら10人の計52人が書類送検されたというのである。

亀山敬司会長の摘発はなかったとはいえ、業界最大手のDMMグループが摘発されたことに業界は激しく動揺した。

報道によると公然わいせつは上記Vを撮影した2013年9月30日と10月1日に神奈川県相模原市内の屋外キャンプ場で行われたという。このV撮影が問題となったのも、マークスFの告発に付随したものであった。

では書類送検された女優はどういった心境だったのだろうか。本作に出演していた女優は、AIKA、内田りな、篠田ゆう、F、HIKARI、芹沢つむぎ、友田彩也香、北川瞳、朝倉ことみである。

そのうちの最大武闘派・AIKAは7月10日のツイキャスで、下記のような発言をしていた。誰よりも激しくFと伊藤和子弁護士を攻撃していたAIKAも流石にこたえたようで、ネガティブな発言を連発していたのである。

・バコキャンで書類送検された。(バコキャン2014と確定)
・マネージャーに「起訴されても罰金払えば済むから」と言われ、ムカついた。
・沖田杏梨の引退お疲れ様グループラインで色々憶測・噂を書かれてムカついた。
・撮影で業界人に「自分たちの代わりによく言ってくれた」と言われ、ムカついた。
・仕事がなくなった。他の子は撮影してるから自分だけが撮影してない。
・15-23は休みで24撮影の後25以降休み。
バコバスの他、素人系もなくなる。大人数ものもなくなる。
・マークス摘発の被害女性も書類送検された。

なお、ここで触れられていた大人数もの(で、かつ屋外もの)でなくなったものとして挙げられるのが、7月8日に発禁になったのが同じくCAの本中レーベルからリリースされていた100人中出しシリーズである(下記パケ参照)。特に2015年版はAIKAが騙し討ちの被害を受け号泣したことで悪名高いVだ。なお、これに伴い、椎名そらバージョンで撮影されたもののもお蔵入りになったと考えている。

発禁になったV。人倫に反していると伊藤和子先生にも評された。
発禁となったVその2。AIKAが騙し討ちのAV被害で号泣していることで知られる。

これらのVの発売禁止を受けて、私が記事(https://yap00s.blog.jp/archives/8627093.html)を投稿したところ、伊藤和子弁護士は、私のツイートを引用RTした上で、「こういうAV、そもそも本当にひどいと思う。公然わいせつかどうか以前の人倫、人権の問題。」とツイートしていた。7月11日にはスピンオフ?の一般映画である平野勝之監督作『青春100キロ』が上映中止となった。

CA(当時北都)広報で、マークス取締役もつとめるなど、CAマークス両方の関係者となっていたAVライターアケミンは、業界に激震が走る中、不謹慎にもAVライターのDJイベントで遊んでいた。ここにマスコミが押し寄せAV被害について取材されたのだが、アケミンは「思考停止している。けっこー辛いものがある。この先AV業界どうなるかなんてわっかんねーよ。」と吐き捨て説明責任を放棄。当時、絶望的な空気が漂っていたのである。

しかしながら、公然わいせつで立件は無理だったようで、関係者は不起訴となった。これではおさまらない警察は10月4日、女優をAV撮影現場に派遣した労働者派遣法違反(有害業務派遣)の容疑でダクション6社とその社長ら12名を書類送検した。摘発されたダクションと出演女優を列挙する。

  • バンビプロモーション:北川瞳
  • F2F Entertainment(ロータスグループ、のちのファンスター):芹沢つむぎ
  • ディクレア(のちのシエロ→LIGHT):HIKARI
  • ARTE Entertainment(アットハニーズ):友田彩也香
  • オールプランニング(オールプロモーション):内村りな
  • CLAP(のちのシーモア):朝倉ことみ
  • マークスグループ(一部はのちのLINX):AIKA、篠田ゆう、F

最後には労働者派遣法違反(有害業務派遣)だのみという法律の抜け穴への問題意識が2022年のAV出演被害防止・救済法制定につながっていくのである。

CAは12月に株式会社WILLへと改名し、またしても小手先の目眩しに終始したのであった。

アットハニーズの非道—香西咲とほしのあすかへのAV強要

アットハニーズ青木亮による香西咲・ほしのあすかへのAV出演強要はAVに対する全ての幻想を打ち砕いた。

マークス崩壊、CA摘発の最中、恐るべき告発が同時進行していた。アットハニーズ青木亮による香西咲・ほしのあすかへのAV出演強要問題である。青木亮のダクションであるアットハニーズは屋号で、隠蔽工作で株式会社名をコロコロ変えているが、当時はマークスインベストメント(のちのARTE Entertainment)という名前であった。

このアットハニーズ輩出者としては、伊東遥、峰なゆか、沖田杏梨、栗林里莉、香西咲、辰巳ゆい、友田彩也香、並木優、冬月かえで、ほしのあすかなどが挙げられる。三上悠亜の事務所ワンズダブルはアットハニーズの後継と考えられる。

この事務所の特徴は、元芸能人やレースクイーンをAV送りにして稼ぐ肩書き重視なところである。有名長期専属にできれば大金が得られるため、AV送りにするためモデルに対して長期の心理戦、すなわち「洗脳」も辞さないのだ。

香西咲は2014年にも大樹総研の矢島義也会長への性接待を強要されたとしてアットハニーズ青木亮をツイッターで告発している。その香西がついにAV出演強要問題について告発を始めたのだ。

2016年6月15日、香西は「2011年6月15〜17にMUTEKIのデビューVで富士山に近いソラナという施設で20人近くの制作に囲まれ、恐怖で本番強要をさせられた」と告発。日付を遡って契約書を書かされたという。アットハニーズへの紹介は一般芸能プロダクションのエイチームからの「横流し」だと主張した。下記に香西さんのツイート(現在は見ることはできない)を掲載する。

20人近くの制作男性のに囲まれてしかも富士山近くのソラナと言う逃げられな雰囲気を作られたら、『ノー』と言えない。
私は怖くてなすがママ抜がされて本番脅威をらさせられた。
誰も助けてくれない。私達元芸能人は金になるから。

そして契約書はデビュー撮影後、日付遡って書かされました。撮影したのが2011年6月15日.17日、パッケージ等も。
しかしCAとマークスインベストメント(アットハニーズ)と3社間の契約書があると初めて知らされ、22日に無理やりサイン。脅迫。

私がA-team/A-plus等ほしのあきさんやDAIGOさん、芹那さん等多数の芸能人が在籍されている芸能プロダクションから、スカウトされ、結局横流しされたのが株式会社マークスインベストメント/アットハニーズだった。元芸能人ばかりをねらう悪質なカルト洗脳集団。

さらに「(AV被害に関する)東スポの記事が掲載された際、『ウチの三上悠亜の連載中降ろすぞ』とアットハニーズ青木亮が東スポに電話かけてきた」と主張した。事実とすれば三上を利用した言論弾圧である。

2016年3月17日発売東スポさんに個人情報伏せて取材を受けたけど、掲載された瞬間に青木亮が東スポさんに脅迫の電話かけてきたらしい『今すぐ止めないとウチの三上悠亜の連載中降ろすぞ』
私の所にはオーセンス池田康太郎弁護士から脅迫電話。

香西さんがアップしたアットハニーズ青木亮の写真

7月6日には週刊文春上で、佐藤涼子(のちにほしのあすかと判明する)と共闘し、AV出演強要でアットハニーズ青木亮を刑事・民事両面で告発することを宣言した。香西はその心境について下のようにコメントしている。

今でも時々、当時の記憶のフラッシュバックに悩まされます。いっそ自分の人生を終わらせてしまおうかという衝動に駆られたことも一度や二度ではありません。でも、青木に騙された過去といつか折り合いをつけなければと思って生きてきました。AVの出演強要が社会問題化している今しか、人生を立て直すチャンスはないと思い、告発と訴訟を決断したのです

AV出演強要問題が社会問題化する中で、今、言挙げし、自らの人生を立て直したいと考えたのだ。それでは、香西咲と同時に告発に及んだ「佐藤」が誰なのか?7月7日に発売された文春には、下記の趣旨の記載があった。

佐藤はマークスインベストメント(アットハニーズ)と契約、2010年5月ごろ、イメージ撮影との説明でスタジオに向かったところ本番撮影があることを突然知らされ、恫喝され、撮影に応じなければ一億円請求するとおどされた。山梨県山中湖のスタジオに連れられ、十数人の撮影スタッフに圧力をかけられ、出演を余儀なくされた。佐藤は撮影中涙をこらえられなかったという。2010年9月に佐藤デビューの大々的な広告を見たことを香西咲は覚えているという。

デビュー時期などから、佐藤はほしのあすかであると推定された。法外な違約金と恫喝にによってミスマガジン受賞者という超有名アイドルであったほしのを屈服させAV出演強要させるおぞましい手口が明らかとなったのである。ちなみにデビュー作でほしのを恫喝したのはSOD社員監督の新保である。SODは本来説明責任を果たすべきところ、一切誠意ある姿勢を見せるどころか、V消しするまで時間稼ぎするなど不誠実な対応をとっていた。

ほしのは8月26日には匿名で朝日新聞系のwithnewsの取材にも応じた。この時の服装が特定され、佐藤はほしのであることは確定的となった。

そしてほしのあすかは11月21日に自身のブログで青木亮を告発するに至った。このブログのポストでは、戦友・香西咲へのリスペクトと共に、過酷な搾取の実態が記されていた。ほしのクラスの芸能人であれば、莫大なギャラ、例えば1本あたり500万円以上の金額がSODから振り込まれていたはずだが、ほしのは一般OLレベルの給料しか得ていなかったというのである。強要の果ての非道なギャラ搾取の実態に唖然とさせられる。

AV業界に残りながら闘争することを選択した香西と異なり、ほしのあすかは引退しており、V消しを強く要望していた。2017年1月24日、ほしのあすかのVはDMMから削除され、削除を渋っていたSODも2月1日ごろV削除した。ほしのにとって大きな区切りはついたのだが、SOD・青木からの誠意ある謝罪と償いは一切ないまま、今に至るのである。

元SOD専属AV女優・麻生希、覚醒剤で逮捕

SODデビューで圧倒的な美貌を誇った麻生希だったが、マインズ紗倉まなの後塵を拝しハードなV撮影も余儀なくされるなど苦難のAV人生となった。果てに薬物で逮捕されたのである。

SODデビューの麻生希(ヴァンキッシュ所属)は恐ろしいほどの美貌を誇ったが、SOD→マキシング専属とは言いつつエグいVへの出演を余儀なくされるなど苦境が続いていた。

麻生は2月には「ハードをやるなら専門家を呼んでください。体壊しました。作品で殺される。普通の生活に戻りたい。殺されたくない。」と悲痛な叫びをあげており、バッキーのような暴力的な撮影が行われているのではないか?と動揺が広がったのである。

そんな麻生が薬物で逮捕されたという知らせが届いたのは7月6日。週刊実話の表紙にデカデカと麻生の逮捕が掲載されたのだ。

麻生には、懲役1年6カ月・執行猶予3年の判決が言い渡された。しかしその執行猶予中の2018年2月にまたも薬物に手を出し、今度は実刑判決(2018年11月、懲役1年8カ月)を受けることになる。

麻生をVから抜けられないようにクスリ漬けにした、という見方はうがちすぎかも知れないが、麻生の異常なまでのSOSは、クスリによる悲劇を示唆していたのだ。

麻生は死産を経て出所後、ストリップ嬢となり、今はインスタでインフルエンサー業に専念しているようだ。

紅音ほたると雨宮まみの死

紅音ほたるの死

秋月杏奈こと紅音ほたるは2004年にAVデビュー、清楚系からギャル系へと大きくイメチェンしたことと潮吹き芸で有名になり2008年に引退したAV女優である。

紅音はコンドームの着用を訴えかける活動を続けるなど、活動家としての側面も持つAV女優であった。かさいあみとも親交があり、かさいの社会活動家への傾倒にも大きく影響を与えたと言える。

そんな紅音であるが、成人になってから喘息に苦しめられていたようである。紅音は事務所の社長兼マネージャー兼彼氏であった原敏史と同棲していたが、原が8月15日、亡くなっている紅音を発見したという。原因は急性喘息とおもわれるという。

当時の様子を原がFacebookに書き残している。原の陶酔した文体から当時の異様な感情の昂りが伝わってくる。

紅音はポールダンスやDJもこなすなど、自分のやりたいことをやって奔放なようにも見受けられたが、その実「籠の鳥」だったのだという。紅音はなくなる一ヶ月前に深刻なツイートをしていた。

紅音ほたる@akanehotaru1025

poledanceもDJも自分からやりたいと思ったわけじゃないんだよなぁ。
だから自分からやりたいと思ったAVとは全然ちがうわけで、引退後の活躍に対して
「ほたるさんのように自由に」「憧れます」なんてコメントをもらうけど
実際は籠の鳥だよ2016/07/14 02:44:01

紅音が本当にやりたかったことはなんだったのか。その中にはAVやHIV予防活動があったとは思われるがそれ以外には?今となっては知る術もない。

雨宮まみの死

AV監督オタクとして知られる雨宮まみ。松嶋クロスのVを堂々批判するなど、気骨ある純AV評論家として名を上げた。その代わりにオレンジ通信石井編集長が追い込みをかけられたが…

雨宮はエロ本編集者からAVライターを経由して一般のエッセイストとして活躍、「こじらせ女子」が流行語になるなど、女性の自意識を精査することに長けた書き手であった。

その雨宮は11月15日に自宅で「事故」でなくなった。享年40歳であった。詳細な死因については明らかにされなかったが、不可解な死を遂げたことについてAVライターのみならず多くの文筆家が衝撃を受けたのである。

誰よりも自意識をこじらせ、自問自答の苦しみの中にあった雨宮はあの世で解放されたであろうか?

AV事務所による風俗店派遣の摘発—ベルテック・エルプロモーション

上から、逮捕されたベルテック(BELLTECH、現ルミナスプロモーション)前田正太郎、エルプロモーション(SSL)木ノ本直記、スタイルワン榎本昌央

AV事務所によるAV撮影現場への派遣は公衆道徳上の有害業務派遣として摘発されることは上記の例にもあったが、ソープへの派遣もまた、公衆道徳上の有害業務派遣である。AV事務所がAV女優を風俗に斡旋することはよくあるが、その斡旋を理由にしたAV事務所の摘発は異例だったという。下記の記事は共同通信によるものだ。

 所属するAV女優をソープランドに紹介したとして、警視庁保安課は24日までに、職業安定法違反(有害業務紹介)の疑いで、芸能プロダクション3社の社長3人を逮捕した。同課によると、ソープへの紹介を巡り、芸能プロを摘発するのは異例。

 逮捕されたのは、芸能プロ「スタイルワン」の社長榎本昌央容疑者(39)=東京都足立区、「SSL」の社長木ノ本直記容疑者(42)=渋谷区、「BELLTECH」の社長前田正太郎容疑者(38)=目黒区。

 3人の逮捕容疑は2012年9月~今年5月、客と売春させると知りながら、AV女優3人を東京・吉原のソープランドに紹介した疑い。

なお、木ノ本はみひろのマネージャーとしても知られる人物である。この摘発は、吉原ソープであるオートクチュール・ラテンクォーターの摘発に付随するものだが、このソープに女優を派遣していたティーパワーズやマインズはなぜ摘発されないのか?という点を私は怪しんだ。両事務所は今まで摘発されたという報道は聞いていない(報道されていないだけかもしれないが)。

女優斡旋の背景には風俗店からの風俗嬢の売上の10%程度のスカウトバックがAV事務所的においしい、というものがあった。この資金経路を断とうとしたのが風俗店からのスカウトバックを禁止する2025年の改正風営法である。

古都ひかるのV消し

古都ひかるはAV村からの苦難の逃避行の果てにYoutuberコトリッチとして奇跡的復活をとげ、マークスFについでAV女優で歴代2番目に早くV消しした伝説的女優である。

古都ひかることコトリッチ(現・しーちゃん)は、2003年hmpデビューの女優で、2004年、人気絶頂の11本目を出演後に忽然と飛び、AV村からの苦難の逃避行を経て、Youtube最初期の2008年にYoutuberコトリッチとして鮮烈な復活を果たした伝説的AV女優である。2010年にアップロードされた「フリーザの格好をした衝撃的な動画」は記憶に新しい。2012年のAV30という歴代AV女優の人気投票では6位にランクインするほど、絶大な人気は衰えず、今なお熱狂的なファンが存在する。

そんなコトリッチは2016年8月上旬にDMM・hmpからV削除していたことが私のweb.archiveによる調査で判明している。香川ルリカなどの例外的な例を除けば、古都ひかるは6月中旬のFのV削除につづき、AV女優で2番目に早くV消しした人物なのである。当時はAV人権倫理機構もCCBUもないから、弁護士を立てて自力で削除したと考えられる。ちなみに、3番目にV消ししたのが先述した2017年1月のほしのあすかだ。古都はついに自らの「黒歴史」(2025年の配信での発言より)に一つの区切りをつけたのだ。

コトリッチは2023年にCotorichのCから「しーちゃん」という名前に一本化した。名前すら完全に捨て去って過去と決別しようとする意思は堅い。しーちゃんは今はカタギとしてデザイン会社の社長業と並行して配信者としての活動を精力的に行なっている。

AVAN設立と川奈まり子の野望

川奈まり子はAV擁護のためAVANを結成するが、2017年にAVAN理事で夫・溜池ゴローによる瀧本梨絵さんへのAV強要が大きな騒動となり、信用は地に落ちた。

SOD取締役にしてCAでもメーカーを主催するAV監督・溜池ゴロー。その妻で元AV女優の川奈まり子という人がいる。川奈はAV入りする前の経緯で、AV強要の経験があったのだが、にもかかわらずなぜかAV業界はホワイトであると主張し、出演者の権利を守れと主張しつつ、AV批判の矛先をかわすことを画策した。この目的のために7月11日に結成されたのがAVAN(表現者ネットワーク)である。なお、AVAN理事には夫の溜池ゴローが就任していた。

川奈は積極的にメディア露出を繰り返していく。AV業界の闇を何ら知らない大メディアは川奈のプロパガンダを垂れ流すだけの存在と成り果てていた。川奈はAV女優は「表現者」として自由意志でAV出演するれば職業安定法や労働者派遣法違反による摘発対象とならなくなり違法性から脱却できるという思想のもと、出演者とプロダクション間の統一契約書フォーマットを作成することで、人権侵害を防止することを目指したのである。

しかしながらその実は川奈の売名や利権確保にしか見えず、業界内からも川奈のスタンドプレーに対して批判が寄せられた。さらに、溜池が取締役を務めるSODがほしのあすかさんへのAV強要を行なったことを知りながら、「AV業界に強要はない」などとメディアで発言するなどのご都合主義についても一般人(私など)から批判が殺到したのである。

とどめとなったのは、SOD専属・瀧本梨絵さんがAVAN理事・溜池ゴローに意に沿わないハメ撮りを強要されたという告発である。これによってAVANの信頼は地に落ち、解散へと突き進むのだが、その話題については「2017年のAV業界を振り返る」で取り上げたいと考えている。

終わりに

2016年を振り返ることがこんなにもボリューム感のあることとは想定していなかった。思い返せば、この年はAV業界人にとって悲報続きの年だったのである。アケミンは、「数年分の厄が一気に来た年だった」と悲劇のヒロインぶっていたが、AV業界の非道のツケが回ってきたということに尽きるのだと思う。

こうしてAV業界はさらなる怒涛の年、2017年へと突入する。

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