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2019年のAV業界を振り返る

2017年のAV強要の社会問題化を契機にAV業界は大きな批判にさらされ激しく動揺した。AV村は自主規制としてAV人権倫理機構、「適正AV」を成立させ世論の沈静化を図り、2019年にはいったんAV業界批判は落ち着いたかに見えた。

AV業界批判の「退潮」に乗じて、AV業界人による伊藤和子弁護士への「逆訴訟」の珍事が起きたり、村西とおるを題材にした『全裸監督』ブームが席巻したりとAV業界の「反動」も見られた2019年のAV業界のニュースについて振り返りたい。

目次

強制性交等罪で逮捕起訴された東大生AVライター・稲井大輝、示談成立で執行猶予付き判決

AV業界の寵児・稲井の破滅

DMMでも連載し、AV業界で重宝されていた「クリーン稲井」こと東大生AVライター・AVスカウトの稲井大輝。noteで大活躍中の作家・はあちゅう先生も「好感度高い」などと絶賛していたことが記憶に新しい。業界の寵児として増長した稲井は自宅マンションに30代女性を連れ込んで乱暴したとして、2018年に強制性交等罪で逮捕・起訴された。

裁判で稲井は容疑を認め、「750万円で示談が成立し被害者からの嘆願書がある」と主張して、執行猶予を勝ち取った(2019年1月30日)。さすがに有罪が確定したことで東大は除籍となったという(入学すらしていない扱い)。東大ブランドをなくした稲井に格別のスカウト・男優の能力があるはずもなく、AV業界に居場所はないのであった。

風の噂では現在稲井はYoutuberの中町兄弟の裏方として糊口を凌いでいるようである。AV村からは完全に足を洗い、堅気として反省の日々を送り、いつかAV村の非道な内情について告白してほしいものだ。

AV業界人・松嶋クロス、中野区の中学校近辺に暴力団事務所を設立して逮捕

AV業界を恐怖で統制してきた松嶋

関東連合最高幹部で住吉会系暴力団員にしてAVプロダクション最大手・ティーパワーズ創業者でAV監督の松嶋クロス。松嶋は恐喝容疑で2018年1月及び3月に逮捕されており、特に野間あんなの悲劇に関連してAV男優・森・清水・イセドンが恐喝された事件はAV史に深く刻まれることだろう。

そんな松嶋は2019年2月に中野区の中学校の付近に暴力団事務所を設立したとして逮捕された。AV業界は関東連合、さらには住吉会系暴力団の影響を受けているという現実を忘れてはならない。

その後松嶋は2022年12月に新宿区のゲイバーで暴れ、脅迫・器物損壊の疑いでも逮捕されている。松嶋はなぜ長期刑を受けずにシャバで暴れ回っているのか。官憲はしっかりと取り締まってほしいものだ。

AV制作会社ビエント社長・中野斉、伊藤和子弁護士を名誉毀損で訴え勝訴

伊藤先生敗訴の珍事

2018年1月17日に淫行勧誘で逮捕されたAV制作会社ビエント社長・中野斉。(なお同時に、シエロに改名したのちLIGHTに吸収されたプロダクション・ディクレアの雪本剛章及び森田智博も逮捕された。)

これに対し伊藤和子さんはこのようにツイートした。

逮捕されて制作会社社長が顔を必死に隠しているシーンを見て思ったこと。

嫌がる女性たちに出演強要し、顔や体、最も知られたくない屈辱的なことを晒させて拡散しズタズタに傷つけて、自分たちは陰に隠れて巨額の利益を得る。

そんな鬼畜のような人たちはみんな顔を晒して責任を取って欲しいと思う。

しかしながら、中野らは2018年3月16日に不起訴となった。中野は伊藤弁護士のツイートの「鬼畜」表現が名誉毀損であるとして500万円の損害賠償などを求めて裁判を起こしたのである。

東京地裁は2019年11月27日、伊藤弁護士に対して5万円の支払いを命じた。これを不服とした伊藤氏は控訴したものの、東京高裁は2020年10月28日、20万円に増額して支払いを命じる判決を下した。その後最高裁は2021年5月11日に上告を棄却し、判決が確定したのである。

上野千鶴子はこの判決はAV被害告発の声を封じるものとして、容認できないと批判した。

この件を通じて、「非道なAV業界人の居直りスラップ訴訟に対して、裁判所ってこんな無茶苦茶な判決するんだ…」という失望が広がったのである。

この事件で、AV業界にまつわる言論環境は全然非道なままで、批判すればすぐ裁判が飛んでくるというとんでもない世界であることが再認識された。これを大きな契機として、伊藤弁護士率いるAV批判陣営はAV規制に向けてより急進的な取り組みを進めるようになっていった結果、2022年のAV出演被害防止・救済法制定が大きく加速されていったと言えよう。

村西とおる『全裸監督』ブームの波紋

『全裸監督』は現代人権倫理を無視した世界である。

2019年には、本橋信宏がAV監督村西とおるを描いた評伝『全裸監督』を原作にしたNetflixのドラマがブームとなった。はちゃめちゃなAV業界に興味本位で惹きつけられた視聴者が多かったのだと思うが、AV批判サイドとしては色々と問題が多い作品であると言わざるを得ない。

例えば、村西の人を説得する方法としてとにかくひたすらあー言えばこう言うで対抗していく「応酬話法」は、AV強要そのものであるが、性被害にあった女性たちはどうなっていったのだろうか。また、実名で登場する黒木香にドラマ化の許可は取ったのかどうか?といった観点での批判もある。

原作で本橋は黒木、日比野の逸話をもとに、黒木の「ベランダからの転落」騒動も単なる事故と断定した上で、黒木は「自殺」と書かれることに苦言を呈しただけで、あったことを著書にすることは問題ないはずだと言いたげではあったが、Netflixはドラマ化の許可は取っていないのだろう。

村西のような強烈な監督の個性に振り回されたAV女優として、森下くるみが想起される。『全裸監督』に関して黒木香のプライバシー権から、そもそものAV業の問題について、森下と伊藤弁護士が対談していたのでリンクを貼っておく。

『全裸監督』で見られるAV強要AV被害の伝統は、労働環境の自主規制の始まった2017年ごろまで大して変わらず、法的には2022年まで野放しであった。この事実を厳粛に受け止め、決して「大昔の笑い話」ではないことを肝に銘じるべきである。

SODによる新たなAV被害が発覚、香坂きのさんのケース

SOD被害がまた一つ明らかに

プラモアイドルとして知られるユーチューバー・香坂きのさんがYoutubeでSODによるAV被害を告白したのは2019年10月である。

香坂さんによると、2010年に名古屋でSODの人間に「アンケート」と称して説明もないまま撮影承諾書にサインさせられたのち、車に乗せられたところ、そこには男優とカメラマンがいたという。男優の性器をさすることを要求され、手袋を着用して行ったという。「謝礼」として2万円が渡されたとのことであった。

なお、このビデオは2011/12/20発売のSODクリエイト藤丼博之監督が撮影したものである。

SODといえば、上記の本橋信宏『全裸監督』で出てくる、SODオーナー・高橋がなりがマジックミラー号の撮影で素人と称して仕込みの女優を準備したADの顔面を殴りつけて青あざまみれにした逸話が想起される。

SOD高橋はADを暴力で支配し、素人女性の強引な出演を無理やり行ってきた非道なAV業界人である。この伝統がSODには脈々と受け継がれており、藤丼博之監督も当たり前のように素人女性を騙して無理やり撮影していたのだろう。

なお、SODによる被害として、2016年に明らかとなった元アナウンサーの松本圭世さんのAV被害(あめを舐めただけだが、表パケに使われた)も藤丼博之監督作であった。

2度もAV被害で告発されたSOD藤丼博之は改名でもしたのか一時姿をくらましていたようだが、ほとぼりが冷めたとみたのか最近堂々、復活したようである。このような非道な行為を常習的に行ってきたSODは即刻廃業すべきではないだろうか。

AV女優・あいだ飛鳥の自殺

あいだの死に業界は震撼した

2019年、訃報も飛び込んできた。高嶋ゆいかこと夏川ゆず季ことあいだ飛鳥が命を断ったというのである。

あいだ飛鳥は2019年2~3月に自殺したのだと6/23に宝生リリーは語っている。亡くなってからもVはリリースされており、なんなら宝生の告発後もJHVからVRがリリースされていた。なお、DMMでVは削除されることなく今も残っている。

あいだの最後のツイッターでの投稿では疲れ果てたあいだの姿が見受けられる。宝生は、ギャラが3絡み20万円であったことがつらかったのではないか?としてダクション・ジールグループを暗に批判しているが、企画単体の相場としては異常に低いわけではない。

なぜあいだが命を絶ったのかは謎のまま残されている。

刑務所の麻生希

麻生の更生はなるか

2012年にSOD専属としてデビューしたAV女優麻生希。

麻生は覚醒剤による2度の逮捕ののち、2019年7月の段階では刑務所にいた。事務所との闘争や死産という壮絶な経験を経て刑務所生活でクスリも抜けたのか、更生を果たしたようである。

記事によると20年末にも出所、とのことであったが、出所した麻生は21年年初、トークライブを開催していた。

NOZOMIと称していたようである。

その後、望海あや名義でストリッパーをやっていたようだ。

今はインスタグラムでインフルエンサーをやっているとの風の噂を聞いている。(アカウントの特定には至らず。)クスリを完全に断ち、性風俗業界からも足を洗って、堅気として再出発して欲しいものである。

有名女優のV削除ラッシュ

エスワンの功労者蒼井のV削除によりV削除は普通のものとなった。

2019年は超有名女優のV削除が連続した年だった。きっかけは2018年末の森下くるみのV削除だった。森下はAV人権倫理機構を通じて削除を申し入れたと19年1月に明らかにしている。

ちなみに、V削除にあたり森下にAV人権倫理機構を紹介したのは二村ヒトシだったという。

これまで、V削除した女優はAV村と縁切りした人ばかりだったが、森下はAV村とは未だに接点を持ち続けている。森下は「AV業界と縁切りしなくてもV削除できる」例を作り「削除申請のハードル」を下げたのだ。

森下の削除の後、有名女優のV削除が相次いだ。以下に列挙する。

3月:蒼井そら

5月:鮎川なお、橘梨紗

7月:伊東ちなみ

9月:Rio

もちろん、これらの元女優たちのAV業界との距離が今どれくらいなのかは人それぞれで、不明ではある。特に、18年12月に不可解な発売直前Vの発売中止のち姿を消した伊東はAV人権倫理機構経由ではないのかもしれない。

しかし大勢の有名女優のV削除実績がある以上「V削除を訴えるAV女優は業界の敵」などと主張していたAIKAのようなAV擁護急進派は力を失ったのであった。

大塚咲とアダルトグッズメーカーの無断画像使用闘争

大塚咲

2012年にVを引退した元マークス所属・大塚咲。2017年のマークス崩壊後完全フリーとなっていた大塚は2019年にAV人権倫理機構に申し出てV削除を進めていた。なお、現在(2025年)DMMではV削除がなされているが、プレステージ系サイトMGSではいまだにVが残っている。

そんな中あるアダルトグッズメーカー(NPG?)の商品で別の女優(AIKAを大塚咲が撮影した!という触れ込みの商品?)とのコラボ商品などで、無断に大塚咲の名前と写真が使用されたものが販売されていたことが判明する。

これを2019年6月に知った大塚は愕然としたという。彼女にとって、アダルトグッズでの無断写真使用がいつまでも続くことは耐え難いものであった。

そこで大塚は販売差し止めを求めていたが、一部の商品でメーカーが販売差し止めに応じないため、2020年3月、アダルトグッズメーカーを相手どり販売差し止めと損害賠償を請求する訴訟を起こしたのである。

アダルトグッズメーカーとの訴訟では伊藤弁護士とも連携し、2022年に大塚の勝訴の形で和解が成立したという。グッズメーカーも、ダクションを無くした大塚を甘くみていたのではないか。

AV女優は「フリー素材」としてぞんざいに扱われがちだが、メーカー・プロダクションのみならずアダルトグッズによる被害もあるということを世に知らしめる裁判であったと言えよう。

適正AVの総出演料開示と朱音ゆいの逮捕

2019年の重要なポイントとして、1月1日より「適正AV」の「出演契約同意書」において「総出演料開示」を必須とする業界内自主規制が成立した点が挙げられる(『アダルトメディア年鑑2024』)これにより、ダクションによるモデルからの過剰な搾取は困難となり、ギャラの折半が定着した一方、未払いの問題も顕在化した

2019年は女優も逮捕された。元プレステージ専属・朱音ゆいである。逮捕は2019年6月26日に報道された。

朱音は2011-2012にプレステージ専属として活動していた。

 全裸でわいせつな行為をする映像を動画サイトに配信したとして、元AV女優の女らが逮捕されました。

 元AV女優の「朱音ゆい」こと常住愛容疑者(30)とスカウトの久田宏明容疑者(34)は、全裸でわいせつな行為をする様子を動画で配信した疑いが持たれています。警視庁によりますと、久田容疑者らはおととし12月ごろからわいせつな動画を配信し、これまでに1300万円ほどを売り上げたとみられています。久田容疑者は「露出しないように言っていました」などと容疑を否認し、常住容疑者は「生活費のためだった」と容疑を認めているということです。

https://web.archive.org/web/20190627094713/https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000158040.html

スカウトを食わせるために違法なライブチャットに手を染め、逮捕に至ったということだ。仮にもプレステージ専属がこうして摘発されるとは哀れというほかない。

終わりに

2019年はAV業界が自主規制「適正AV」の成立で批判を乗り切ったと思い込み、反動も見られた年であった。

しかしながら、適正AVの枠組みはあくまでも業界労働環境の整備に過ぎず、AV人権倫理機構によるV削除の取り組みも完全ではなかったことから、真にAV被害で苦しんでいる人たちの救済には程遠かったのである。

そうした声に耳を傾ける伊藤和子弁護士・HRN・PAPSの地道な活動により、森下くるみ・大塚咲などの有名元AV女優も伊藤和子弁護士らと対話を進め、AV業界包囲網は着々と分厚さを増していったのである。

次回は2020年のAV業界を振り返っていきたい。

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この記事を書いた人

ブログ「KMノート」管理人。
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