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なぜ私は「反AV」になったか

AV強要問題が社会問題となった2016年以降、AV批判は勢いを増している。2022年にAV出演被害防止・救済法(AV新法)が制定されたことによって、1981年の初のAV発売以降、野放しだったAV業界にようやく一つの法的規制の手が入り、プロダクション・メーカーといったAV業者によるAV出演強要・AV出演被害が抑制されつつある。

しかしながら、そもそも女性への性暴行を撮影してばら撒き金儲けする「AV業界」という存在自体、もう終わらせるべきではないだろうか。セクシャルハラスメントにならないように、一言一句に細心の注意を払うのが当たり前の現代社会において、女性の人権倫理を踏みにじる本番性交の撮影販売がまかり通っている現状は打破しなければならないと思うのだ。

筆者はAVユーザーからAVアフィリエイトブログ「AVメモ」の運営を経て、AV業界ウオッチを続ける中で、AV業界の嘘・非道に気づき、AV被害の実態を認識するとともに、AV削除をしてもなお残り続けるスティグマに思いを巡らせるようになった。その結果として、AVを禁止すべきという考えに至ったのだ。

では具体的に、なぜ私は「反AV」となったのか?少々長くなりそうだが、説明していきたいと思う。

目次

AVと私 — 「AVメモ」というAVブログを運営して

私は2003年に上京して明大前に住んでいたのだが、駅前にあったセルAV店に入り浸るうちにムーディーズなどの過激なセルAVの虜になっていった。当時はムーディーズの『デジタルモザイク』シリーズを買い集めていたのである。さらに2004年には王子の近くのセルショップでエスワンのド派手なローンチのポップを目撃して度肝を抜かれたのだ。

こうしてAVの世界に夢中になった私は、毎日ネットでAV情報を追いかける立派なAVユーザーとなっていったのである。今思えば完全にポルノ依存症だ。当然、Vで踏み付けにされた女性の苦しみに対する想像力は全くはたらかなかったのである。

そして、私は、2010年から2018年にかけて「AVメモ」というブログを運営してきた。このブログは出発当初はAVアフィリエイトブログとして、2chまとめやアイポケ・ムーディーズ・エスワンといったレーベルの新作パケを貼ってSODやアリスJAPANを叩き、対立煽りをすることでアクセス数を稼ごうとしたのだ。

その意味で過去の私はアダルトブロガーとしてAV業界の片棒を担いでいたAV加害者でもあった。しかし当時の私は、AV業界の「AV業界はクリーン。女優はみな、セックスが大好きで望んでAVに出てる人たちであり、撮影現場ではチヤホヤされながら楽しく撮影しいる。最大手メーカー・北都(アイポケ・エスワン・ムーディーズ)の専属はがっつりギャラをもらって幸せにやっているんだ」というAV村の御用ライターのプロパガンダにまんまと騙されていたのである。

しかしながら、AV女優のツイッターフォロワー数ランキングなどを作成していて、女優のツイッターでの発言を追ううちに、彼女たちがさまざまなAV被害で苦しんでいることを目の当たりにした。また、AV業界は関東連合・住吉会のアウトローが最大手プロダクション・ティーパワーズのオーナーだったり創業者だったりする、無法地帯であることも分かってきた。

本来言論で自浄作用をもたらすべきAVライターたちは、レンガ愛宕や『オレンジ通信』石井編集長などに対する松嶋クロスや松本和彦の私刑を見て震え上がり、目の前の誰も読まないAVレビューで文字数を埋める作業に逃避していた。

それどころか、AVライター・中村淳彦などはAVメーカー・あけぼの映像を立ち上げてみたり、AVライター・アケミンはAV事務所・マークス取締役に就任するなど、ライターが女衒化してAV村のプレイヤーとして「活躍」し、AV村に加担するという悲しい現実があったのだ。

私はこうした事実をもとにAVライター界隈を「御用AVライター」と命名したのだが、伊藤和子先生も「AV業界には御用ライターしかいない」ことに同意してくださった。

そもそも撮影の根幹となる本番性交において、性器が痛いことに苦しむ女優が多い。桃瀬えみるや辻本杏、佐藤るりこと鈴木鈴美なども粘膜が弱いことをカミングアウトし、撮影では忍耐を強いられたと発言している。ガシマンなどはもっての他だ。これを見越して「私は鉄マンなので大丈夫なんです」と自称する女優も現れ、もはやAVは我慢大会となっていた。嘘に嘘を重ね、無理に無理を強いる業界。「ソフト」なはずのベーシックな絡みの段階で既に出演女性の肉体に大きな負担がかかっていたのだ。

鈴木涼美に至っては、後ほど説明するが、「あそこが弱め」なので3Pとか4絡みの普通のVよりも燃やされて火傷するような「拷問AV」の方が楽だったと述べている。どんな無茶苦茶な業界なのか。

金銭面(ギャラ)はどうだろうか。立花はるみや杏樹紗奈の赤裸々なギャラ告白によって、「AV女優は稼いでいる」という思い込みも崩壊した。

AV女優は、ごく一部の人気長期専属であっても、1本あたり総出演料400万円のダクション5割引きでせいぜい年収2000万円程度にしかならない。新卒にしては高いかもしれないが、数年しか働けないAV渡世で、税金もあって都内住みでは、割に合わないのではないか。(しかも2025年現在でもフォーティーフォーマネジメントの例にあるように未払いが横行している。)

とりわけ、2015年のニューゲートSOD AV強要違約金訴訟で、AV強要被害女性に2460万円もの違約金を請求したAV業者がいたことに大きな衝撃を受けた。この事件に対し、AVライターアケミンは、「単純に違約金と弁護士料がどれぐらい差があったのか…気になるよね(ゲスゲス」などと血も涙もない発言をして被害女性に追い込みをかけていた。そういう地獄のような業界だったのである。

その後、伊藤和子先生やぱっぷすの活動によって、徐々にAV強要被害女性が公然と声を上げるようになっていく。過去に自伝などでAV被害を告白していたAV女優も再認識されるようになっていった。私のブログも、いつの間にかAV被害の問題をひたすら取り上げ続け、AV業界の自浄を強く求めるようになっていったのである。

松本和彦のような「AV業界の私刑での治安維持部隊」もうちのブログを監視していたようで、野間あんなさんへの非道な性暴力を発端とするイセドン・清水・森への恐喝も、うちのブログ記事が影響したと考えている。松本とニコ生をやっていたAV女優・横山美雪もうちのブログの山川青空の記事を読んだと発言していた。

AV批判の過程では、AV業界サイドの代弁者となったAV女優たちとの論争となっていく。当時は、かさいあみ、みづなれい、阿部乃みくといった企画女優が強硬に私に反発してきたのであった。

こうしたブログ活動を通じて、伊藤和子先生のみならず、長谷川君子さん(現・貝柱茜さん)、ブルーノ飯さんのような急進的なAV規制派と交流し、AVの非道をますます憂うようになったのである。

AV被害の実例 — 鈴木涼美について

元VIP専属AV女優・佐藤るりこと鈴木涼美。近年では芥川賞候補に2度も選ばれるなど卓越した文才を発揮している。涼美は東大院で社会学を専攻し、AV女優の心理や自己決定権について考察を深めた。しかしながら自分自身の大火傷というAV被害について否定しようとするがあまり、他のAV被害女性を「でっち上げ」と呼んでしまったことについて、私は総括が必要と考えている。

さて、AV出演強要、本番強要、法外な罰金、イメージビデオ撮影やアダルトグッズモニターなどと偽った騙し打ちAV撮影、現場で大怪我をしたAV被害女性の実例として、実名を明確に出せる有名女優だけでも、穂花、麻美ゆま、大塚咲、ほしのあすか、香西咲、瑠未くるみ、瀧本梨絵、佐藤るり(鈴木涼美)、乃々果花、川上奈々美、澁谷果歩、星月まゆら、マークス被害女性・Fなどの例が挙げられる。

全女性について、詳細な被害を説明し、「AV被害はない!」派の妄言を粉砕したいところだが、時間の都合もあり、ここでは芥川賞候補・鈴木涼美の例について考えてみたい。

私は2017年に佐藤るりこと鈴木涼美がアタッカーズ『蛇縛の極道挽歌2』で可燃性の泡を背中に吹き付けられて着火させられ、消えない火傷痕を負傷したことを知り、あまりにも非道ではないかとツイートした。

しかし本人は、(この撮影は大変でした。でも和解が成立しています、ぐらいの反応なのかと思いきや)「被害者捏造」だと主張し、なぜか「興奮」したのであった。

そして全てのAV被害女性もどうせ「でっちあげ」だと主張し、「鼻で笑」ったのである。

なお、2022年の鈴木涼美によるとこれは「事故」であり、火傷痕は刺青で隠したとのことであった。可燃性の泡を吹き付けて着火し消えない火傷痕を追わせたのは、監督の意図的な加害であり、決して「事故」ということはできないのではないか。

この件については、今も私は釈然としていない。なぜ消えない火傷の傷害を受けてなおAV業界を擁護し、私や仲間のAV被害女性を「でっちあげ」だと断定して「鼻で笑」ったのか。どんな事情があろうとも、人を火傷させていい、などという契約は成立しない。

どういう心理や忖度が鈴木涼美にAV被害否定をさせたのか。という大きな謎が残るのである。

鈴木涼美はサバイバーではあるが、言論で飯を食っている社会学者であり、作家であるのだから、しっかりとした説明責任はあると思うのだ。鈴木涼美の「『AV女優』の社会学」を真に受けてAV被害を受けた澁谷果歩のようなケースを増やしてはならないのである。

ちなみに鈴木涼美は、上野千鶴子との対談(2021)では、この火傷の件についてAV被害だと認め、「具体的な身の危険を感じ」たと告白している。

権威主義で、相手を見て主張を変える涼美に、「マッキノンガー」だの「自己決定権ガー」などと主張されても全然納得できない。鈴木涼美が2017年にしっかりとAV村を批判できていればAV業界は今頃終わっていたのではないのか、と思うのである。

バッキー事件では撮影と称して女優に大怪我を負わせ逮捕者が多数出たことが知られているが、逮捕されていないだけで、AV女優に非道な性暴行を行っていた輩は多数存在する。

たとえば、SOD系AVメーカー・ディープスでは、AVライターアケミン・イケパイ・マメゾウらが結託して保険金をかけて女優のアナルにタバスコやワインビネガーなどを大量に流し込んで激痛に苦悶する女優を撮影し、救急車送りにする『アナル拷問』というシリーズで荒稼ぎをしていた。

また、インジャン古河は『激姦 ヤマンババスターズ 生きる価値の無いメス共に制裁を!』において女優にライターオイルをぶっかけて着火し火だるまにして撮影するなど非道を重ねていた。バクシーシ山下の『女犯』も女性の人倫を踏みにじる性暴行だとして長く批判を浴びている。

こうしたAV被害の手口、被害の状況は多岐にわたっており、被害をカミングアウトしても生計のために加害者のAV業界と縁切りできず、まともな償いもなしに苦しみを抱えたままの人も多い。

ネット・SNSが普及するまでは、『オレンジ通信』などの業界誌での告発ぐらいが関の山だったが、仮に告発してもアウトローが介入して暴力を背景に言論を封じ込めるAV村の悪しき慣習が横行していた。

被害をカミングアウトできず泣き寝入りしている人も合わせれば一体どれだけ多くの女性が被害で今も苦しんでいるのだろうか。本来であれば国家が即刻、超法規的にでもAV業界を解散させ、被害女性を救済して当然ではないだろうか。

にもかかわらずいまだに「AV強要はない!AV被害はない!強要ガー!」などと居直り、被害女性や支援団体の人たちに粘着して誹謗中傷する人たちが2025年においてもめちゃくちゃいっぱいいるのが偽らざる現実なのである。

AV削除の実例 — 古都ひかるについて

2003年hmpデビューの古都ひかるは人気絶頂の11本目出演後、hmpと名東・ウィンドーとの契約を残して飛び、2008年にYoutuber・コトリッチとして復活した。2016年8月にはマークスFさんに次いで最速でV消しを遂行。元AV女優として最も激しくAV村と闘争した人物の一人と言える。最近は「わき毛女子」と称してメディア露出したり、TikTok、Youtube Liveで生配信を精力的に行っており、一部の熱狂的なファンの支持を集めている。

2016年のAV事務所・マークス摘発に端を発した2017年以降のAV人権倫理機構の自主規制により、従来、「Vを消したいなら金を払うなり裁判なりしてくれるか?」という世界だったAV村でもV削除は一般のものとなり、有名女優・レジェンド女優でもVを削除するのが当たり前となっていった。

2004年、人気絶頂で忽然と業界から飛び、2008年にコトリッチとして奇跡的に復活したのちに2016年、V削除を最速で行った古都ひかるを皮切りに、蒼井そら、森下くるみ、Rio、みひろといった有名長期専属たちが続々とVを消していったのである。

この削除ラッシュを見て、私は、「綺麗どころのはずの長期専属ですら、Vを消したくなるようなAV業界って、そもそも存在自体に無理があるのではないか?」と思うに至ったのだ。

しかし、Vを消せたからといって、全てがチャラというわけではない。違法サイトでは依然野放しだし、中古AVとして通販で入手可能だったりもする。また、そもそもAVに出演したという事実自体が、カタギとして第二の人生を生きていく際に障壁になってしまうのだ。

こうしたV削除後も残るAV被害の象徴的な例として私は上述の「古都ひかる」こと「コトリッチ」ことホーミーの「しーちゃん」について取り上げたい。

古都ひかるは2003年デビューの女優で、2012年に行われたAV30企画では(当時現役だった成瀬心美等の女優をのぞくと)川島和津美につぐ実質歴代2位のレジェンド女優である。何よりも特徴的なのは、彼女は人気絶頂の2004年に飛んだ(hmp・ダクションとの契約を残して失踪した)経歴を持つことだ。

古都はアウトローにも追われていたと思われる。普通なら歴史の闇に飲み込まれ忘れられていくのだろうが、奇跡的に2008年にYoutuber コトリッチとして復活したのだ。

飛んでまでAV業界に反逆してカタギになった経歴をもち、今も発信を続けている元AV女優は、古都ひかる以外には瑠未くるみぐらいしか私は知らない。

さて、古都ひかるは全AV女優に先駆けて2016年8月中旬にV削除を行ったことで知られる。6月、FさんのV削除。7月、CA社長齋藤仁一書類送検。というなかでコトリッチのV削除が成立したのである。この経緯を考えると、裁判というよりも、弁護士によるタイムリーな内容証明一発で取り下げたのではないかと考えられる。少なくとも、この時期はまだAV人権倫理機構が成立する前であり、AV削除には弁護士を立てた法的処置が必須の時期であった。

古都ひかることコトリッチは2016年にデザイン会社社長に就任し、会社を成功させ、2025年現在も精力的に非常に優れた実績をあげていることを私は確認している。しかしながら元AV女優の会社であることが世に知れると、顧客に迷惑がかかり、営業活動にも支障をきたすと彼女は懸念する。

つまり、全てを一生隠し通さなければならないのだ。

そして万一彼女(現しーちゃん)のYoutube live、Tiktok配信で会社の話をすると、「アウティングの仄めかし」になってしまい、話題に出すこともできない。ましてや特定可能な具体的な案件の話をしてしまえば、完全なるアウティングになってしまうのだ。カタギとして成功を遂げ、賞賛すべき業績をあげているのにこんなに理不尽な話があるだろうか。

もっというと、こうして一連の事実を書くこと自体も一種の加害なのではないかと私自身も身がすくむ思いがするのである。それでもブログに書いていくのは、「非道なAV被害に苦しむ人をこれ以上増やしてはいけない」という気持ちがあるからだ。

彼女の考えについては、問い合わせるわけにもいかず、彼女もほとんど語ることはないので正直わからないのだが、20年以上前のV出演がいつまでも女性のキャリアの自由を奪い続け、正当な評価を阻害しているのは事実だ。

カタギに転じた元AV女優は、アウティングのリスクと日々向き合っているという現実を厳粛に受け止めなければならない。

なお、補足しておくが、「AV新法による特定条件でのAV取り下げの義務」以外には、AV削除はあくまでもAV業界の自主規制によるものでしかない。そのため、大島薫や大塚咲のケースでもあるように、メーカーやプレステージ系サイトMGSがAV削除に応じない例も報告されている。

AV削除については、女優が望めば理由に関わらず、いつでも必ず行えるようにすることが最低ラインであり、究極的には法整備が必要だ。

終わりに — AVが存在するという非常事態に終止符を

さて、この記事では金銭的搾取の実態、女性への非道な性暴行とAV削除しても一生残るデジタルタトゥーの被害について述べてきた。こうして女性の実名を縷々あげて議論することは、アウティングの懸念もあり、一般メディアには難しい。その意味で、元AVブロガーである私がこうして語り継ぐのも一つの方便と捉えてほしい。

AVは1981年成立以来40年以上の歴史を持つが、これだけの年月を重ねることで、長期的なAV被害のリスクも明確になってきた。そもそもAVは猥褻の観点から違法だ。AVが存在することが常態と思う先入観を打破し、今は非常事態にあることを認識してほしい。

ごく一部の元AV女優の生存バイアスに惑わされることなく、女性の人生を破壊し、カタギとしての再出発をどこまでも阻害するAVを今すぐ終わらせるべきなのだ。AV被害を断ち切るには全てのAVについて、撮影・販売・所持・閲覧を違法として禁じ、全AV女優の名誉回復を行うしかない。私はこのように考え、「反AV」の立場になったのである。

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この記事を書いた人

ブログ「KMノート」管理人。
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